飄々リベル

30代でフリーランスになった無謀な日記

日本 vs ポーランド「最後の10分」で全体の印象が覆るのは間違っている。ピーク・エンドの法則とは?

次のような経験がないだろうか。

 

・ドラマを毎回とても楽しく見ていたが、最終回だけがひどい内容だったので「ひどいドラマだった」と結論づけた

・人生最上の幸せな日々だったが、最後にひどい別れ方をしてしまったので「ひどい恋愛だった」と呪った

・居心地の良い会社だったが、最後に良くない辞め方をしてしまったので「ひどい職場だった」と憎んだ

・とても素晴らしい試合をしてきたと思っていたのに、最後の10分だけ茶番のようなことが行われたので、目標だったグループリーグを突破したのに「ひどいW杯だ」と唾棄した

 

なぜこのようなことが起こるのか? たった一言で説明できる。「ピーク・エンドの法則」である。これを知っているのと知らないのとでは人生のクオリティに雲泥の差が出るだろう。下記で説明していこう。

 

「ピーク・エンドの法則」とは?

ピーク・エンドの法則とは、私たちは誰でも「最後の印象を良くも悪くも過大評価しすぎる傾向がある」ことを表す認知バイアスの一種である。認知バイアスとは「評価の偏り」もっと言えば「間違った評価」とでも言い換えることができる。

素晴らしい恋愛でとても幸せな日々だった。だけど、最後の別れ方が悪かったので「最悪な恋愛だった」とその日々と相手を呪ってしまうことがある。果たしてこれは正しい評価なのだろうか? 最後のほんの一瞬の印象だけで素晴らしかった日々を全否定してしまうことはあまりにも不合理なのではないだろうか。

そう、不合理なのである。

 

ある実験

「えーでも実際にひどい恋愛だったし、最終回がクソなひどいドラマだったもん」と思うかもしれない。次のような実験がある。簡略化して説明する。

 

・痛みがピークのところで実験を終える。所要時間15秒(A)

・Aとピークの痛みは同じだが、痛みが少しずつ引いていったところで実験を終える。所要時間30秒(B)

 

あなたならどちらの実験を選ぶだろうか。合理的に考えるならAだろう。なぜなら、どちらも痛みの最大は同じであるにも関わらず、Aの方が早く実験が終わるからである。Bは無駄に時間が長い上、引き受ける痛みの総量も多い。

しかし、実際にこれらの実験を受けた被験者の多くはAに悪い印象を持った。これがピーク・エンドの法則であり、私たちには「最後の部分の印象を良くも悪くも過大評価しすぎる傾向がある」からである。Aについて「一番痛いところで実験が終わったからクソ」と評価したということ。

さて、日本 vs ポーランド戦。「最後の10分で他力頼みの茶番を演じたから日本代表はクソ」と思っていないだろうか。

 

「最後の印象」が「全体の印象」を支配する不合理

ロシアW杯における日本の印象はとても良かった。

 

初戦ではコロンビア相手にジャイアントキリング

  ↓

次のセネガル戦は決して諦めない死闘を演じて感動を与え、最高の試合の一つとなった

  ↓

で、ポーランド戦の最後の10分で守りに入って決勝トーナメント進出を決めた。結果、賛否両論を巻き起こし「もう応援しない」「恥」という人も中にはいた。

 

その「もう応援しない」「恥」のような判断が合理的か不合理かを確かめるには、時系列を組み替えてみてどう感じるかを確かめれば良い。

 

初戦で戦略的茶番を演じる(もちろん叩かれる)

  ↓

次戦でジャイアントキリング(お、行けるかも)

  ↓

最終戦で死闘を演じて決勝トーナメント進出(日本は素晴らしい!)

 

この仮の世界のようになっていたなら、おそらく日本中が興奮するだろう。初戦で演じた茶番のことなんて誰もが忘れている。名采配と持ち上げられさえするかもしれない。

しかし、順番が違うだけで起こっていることは本質的に同じなのである。まして、当初の目標であった決勝トーナメント出場は果たした。決定的に違うのは「最後の印象」だけ。ただそれだけ。それだけのことでしかない。

 

ちなみに、ピーク・エンドの法則の本来の意味は「"ピーク(最高潮時)"と"エンド(終わりの瞬間)"」の差が全体の印象を決するというものである。日本代表はそれまで決して諦めない勇敢な戦いぶりを評価されていたので、余計にポーランド戦の「最後の10分」がハイコントラストに際立ってしまったと考えることもできる。

 

人生の合理的選択

「でもやっぱりクソはクソ」と思う向きもあるかもしれない。さて、上の実験には続きがある。

 

AとBの両方の実験を受けてもらった上で、被験者に「もう一度やるならAとBのどちらがいいか」と尋ねる。すると、多くの人はBを選択したのである。

どちらも最大の痛みは同じで、Bは時間だけが無駄に長く、感じる痛みの総量が多いのに。Bを選ぶことは客観的に見て全く正しい選択ではなく、「直感」や「その時の印象」だけで判断してしまっているに過ぎないのに。

実験内容を紙か何かで伝えられたら誰もがAを選ぶのに、実際に実験を受けてしまうと「Aはクソ」と思い込んでしまう。これはおそらく正しい判断ではない。

 

「ピーク・エンドの法則」という認知バイアスを認識せずに主観だけで物事を判断してしまうと、Bという損失を自ら喜び勇んで選択し、正しい選択Aの方をむしろ貶めてしまう可能性がある。つまり、人生において損をしてしまうかもしれないということだ。

海外から批判されるのはわかる。当事者ではないからだ。観客がブーイングするのもわかる。次戦に大きなプレッシャーがかかってしまったのもわかる。

 

しかし、日本のサポーターで「日本代表はひどい。もう応援しない。恥だ」と言っている人たちは、もしかしたら人生においても損失の方を直感で選び取ってしまう危険があるのではないかと思った。

それに、ドラマにしろ、恋愛にしろ、仕事にしろ、他のことにしろ「最後はちょっとアレだったけど、それを抜きにすれば素晴らしかったな」と素直に思えるほうが人生は楽しいと思うのだ。

 

参考文献:

 

ファスト&スロー(下) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

ファスト&スロー(下) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 

参考記事:

 

www3.nhk.or.jp

 

www3.nhk.or.jp

 

www3.nhk.or.jp

 

headlines.yahoo.co.jp