『キング・オブ・コント 2018』の感想を淡々と書いていきます。イチお笑いファンの意見としてご査収ください。また、文中、芸人さんの敬称は略します。ご了承くださいませ。
決勝戦 10組
やさしいズ 419点 10位
会社を爆破しようとする社員と偶然居合わせた清掃員のコント。
おもしろかった。起承転結がはっきりとしていてストーリーが良く練られていると感じた。会社員役の人の「劇団」のような演技も良かったし、ぼそっとつぶやく清掃員のボケも良かった。
トップバッターという順番が不運だったとしか思えない。少なくとも最下位というのは不憫だ。6位くらいでも良かったのではないかと個人的には思う。
マヂカルラブリー 443点 7位
傘を巡って一悶着しているところだけがタイムリープしてしまう話。
まずそのストーリーの発想が秀逸で、その上きちんと話が展開していて飽きなかった。良く練られた素晴らしいコント。序盤、おっさんのほうが「これは私の高い傘だぞ」みたいなどうでもいいことを繰り返し言っていたのが個人的にはツボ。
彼らも2番目という順番が不運だったように思う。5位くらいでも良かったのではないか。
ハナコ 464点 3位(ファイナルステージ進出)
犬の話。
これは設定と演技力の勝利。起承転結も爆発的なボケもない。あるあるネタであり、シュールなコントであり、演劇である。犬が普通に二足歩行して普通に喋っているのが絶妙。四足歩行ではいけなかった。
審査員の松本は、自身もごっつええ感じで「犬逃げてるよ!」というただ犬が逃げているだけのコントを作っていたこともあってか、見る限り犬のコントが大好きなように感じた。
さらば青春の光 463点 4位
学習塾での「鼓舞する人」の話。
彼らはよくもまあこんなに素晴らしいコントを量産できるものだ。畏敬の念を払わねばなるまい。ただこれまでの彼らのコントに比べるとわずかにインパクトに欠けるかな、と思った。もちろん、今年もおもしろかったことには違いない。
ファイナルステージまで残って欲しかったが残念だった。
だーりんず 437点 8位
居酒屋で偶然居合わせた会社の後輩の分まで会計したい会社員と、それが理解できない従業員の話。
「パニックペイ」とかのあたりのくだりはおもしろかったんだけど、うーん、それ以外はよくわからなかった。それと、会社員役の人の滑舌がちょっとアレで聞き取りづらかった。
もっと練ればおもしろくなりそうなシチュエーションだと思う。8位は妥当かなという印象。
チョコレートプラネット 478点 1位(ファイナルステージ進出)
幽閉された男と幽閉した男の話が全く噛み合わないコント。
これは最高に笑った。文句なしの1位通過だろう。こういう何のメッセージ性もなくて「だから何?」というようなコントが好きである。このコントは最初から最後まで「だから何なんだ」が突き通されててよかった。オチも好き。
このまま優勝かと思われたがファイナルステージ...(後述します)
GAG 436点 9位
高校生二人とバイト先のお姉さんの恋の話。
笑ったか笑わなかったかで言えばあまり笑わなかったし、9位も妥当だと思うけれど、だからと言って文句のつけようもない。完璧だったと言ってもいいだろう。「これがGAGのコントだ」というのを見せつけるには充分だった。完成されている。
彼らはテレビなどのガヤガヤしたショウビズ界よりも、営業などでコアなファンを獲得しつつ真価を発揮しそうな気がする。あるいは、コントのスペシャリストとしての裏方とか。
主役を務めた人は声優なんかもできそう。彼らの明るい未来に期待したい。
わらふぢなるお 468点 2位(ファイナルステージ進出)
無駄な質問をしまくる新人バイトとそれに苛立つ店長のコント。
おもしろかった。このコントがおもしろかったのは、設定の秀逸さもあるけれど、ツッコミの人の力量によるものが大きいように思う。緩急がついていて飽きさせない。
それと高得点だったのは順番が良かったという理由もあるように思う。トップバッターだったら最下位である可能性もあったのではないか。
それは彼らがつまらないとかそういうことではない。おもしろかった。運も含めての実力だったのだろう。
ロビンフット 462点 5位
息子の結婚相手の年齢を推測していく話。
おもしろかった。おもしろかったです。結婚詐欺とか出会い系とかそういう方向に行くと思っていたので、良い意味で裏切られた。
だが、何かが足りない気がしてならない。もうひと押しの展開か、テンポか。5位は妥当なんだろうか。やさしいズと同じくらいにはおもしろかった。
それと、コントの最後でユーミンの曲が効果的に流れるのだが、それが効果的だったかどうかはおいておいて、そういう手法はもう古いのだなと感じた。
ザ・ギース 458点 6位
殺人現場に呼ばれたサイコメトラーが全然関係ないものをサイコメトリーしてしまう話。
発想はおもしろく、演出も良かったのだけれど、展開が弱いように感じた。なので最初に包丁の職人が出てきた時には大笑いしたが、先が読めてしまい、後半は尻すぼみになってしまった印象がある。やさしいズのほうがおもしろかった。製造工程以外の何か強いものをボケとして提示できていれば良かったのに、と思った。
審査員の三村が「犯人は刑事さんじゃないほうが良かった」と言っていたのは、彼は読書家で特にミステリーを好んでいるということで、意外性がなかったと感じたのだと思う。
ファイナルステージ 3組
ハナコ 472点 総合得点936点 優勝
砂浜で学生カップルがじゃれ合うコント。
あのー、誠に遺憾なのだが、私はこれのどこがおもしろかったのかよくわからなかった。単独ライブで言えば箸休めに差し挟まれるようなライトなコントに思えた。それを決勝でやるとは。笑いを共有できないというのは本当に残念だ。
基本的に男女役の二人が走り回る話なのだけれど、唐突に三人目が女装して出てきて、あれは何だったのか最後までわからないのはおもしろかった。
叙事的というよりは、叙情的なコント。直木賞というよりは、芥川賞なコントなのだろうか。まー、こういうのは分析しても仕方ない。ハナコの他のコントも見てみようと思う。
わらふぢなるお 454点 総合得点922点 2位
怖い人相手にしょうもない超能力を使おうとする男の話。
うーん、なんていうか、ちゃんと見ていたはずなのに殆ど印象に残っていない。彼らのコントは起承転結の「転」がないタイプのコントなのだと思う。もちろんそれは悪いことではない。チョコレートプラネットの1本目のネタも「転」がほぼない。
わらふぢなるおの1本目も同じ。不要な質問をしまくるだけ。で、それは見事にハマっておもしろかった。ところがこの2本目は運悪くハマらなかった。
「転」なしのコントは一種の賭けなのだと思う。状況設定と場の雰囲気が全て。ハマらなかったら最後まで白けた雰囲気で終わってしまうし、ハマったら最初から最後まで面白い。
これに関して言えばやさしいズのほうがおもしろかった。
チョコレートプラネット 440点 総合得点918点 3位
問題のチョコレートプラネットの2本目である。意識高い系棟梁の話。
これが撃沈してしまったのは「意識高い系を揶揄しておもしろがる時代はとっくの昔に終わっている」という明確な理由があると思う。「意識高い系」はもはや古いテーマだ。
チョコレートプラネットがこのコントを作ったのがいつかはわからないが、少なくとも今やるコントではなかった。キング・オブ・コントのファイナルステージでやるべきじゃなかった、ということではなく、この2018年にやるべきテーマではないということ。もしかしたら10年前ならおもしろかったのかもしれない。
それでももし今やるなら、見習い役の方は「さすが意識高いっすねー」と納得するのではなく、明確にツッコまなければならなかった。それにしても「Macのキーボードがのこぎりになっている」というボケにどう突っ込めばいいのかはわからないが。
たぶんもっとおもしろいコントがあったはずなので、それが見れなくて残念だ。
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M-1グランプリもそうだったし、これまでのキング・オブ・コントもそうだったけれど、こういうのに出てくるダウンタウンがなんやかんやで一番おもしろいのだった。
今年も冒頭での松本の「まずは日村の点数から」が一番笑った。
そう言えば、銀シャリと笑い飯が出ていたM-1グランプリでの松本の「ご飯物が2つある」というのもその年のM-1で一番おもしろかった。